【第55話】なす術も無く

そして、なす術も無く寝た。静かな暗闇の中にゆっくりと落とされながら・・右からは近未来のホースで冷たい水をかけられ、左のアンプからはクレイジーな PUNK ROCK が流れ続けている。

二倍速なのか？いや違うそれ以上の高速だ。いいえ徐々に加速しているわよ。誰？いったい・・なんなんだ・・ここは？夢か？夢だ（夢だ）・・あのマイクロフォンからは、真実と幻想が聴こえる。現実と情熱と静寂が入り混じっている・・マスターはさっきから「NICE CRAZY」って呟き続けながらアサヒスーパードライをグビグビ飲んでる・・キンキンに冷やしてたオレのストックしておいたヤツじゃないかソレ・・と空想のTwitterで呟くと突如目の前に目の形によく似た楕円状の２つの光が差し込んで目覚めた早起きチャレンジは、今日もイカした体内時計の遊戯で成功していた。それだけの事だ。

ただそれだけの話だ。嗚呼そうだな嗚呼このまま起きてやるのも悪くない。視線を向けた時計に笑った。散々寝てやったはずが、まだAM2時だなんて・・なんだ？突然しゃがれたブルースハープの音色が流れ始めた。このバスドラとハイハットとベビーゲージの重く硬いそれでいてトリッキーなこのギターの音もイイ・・想像をはみだす懐かしい（それでいて新鮮な不思議な）メロディだ。

スマホの灯りを顔に浴びながらTwitterを見てたら、リビングから寝室へ向かう人の気配が・・

寝たフリをした。数秒後、朝活をした。三文の得をした。ありふれた日常が始まった。

数分間の二度寝をする前にLINEを見たら、コートが出来たお知らせが届いていた。

まだ全てを失った訳じゃない・・

まだ全てを満たした訳じゃない・・

この研ぎ澄まされた濃厚なセンス、さっきから日本全国のハイレベルなエンターテインメントに痺れっぱなしだ。まだまだオレもこれからだ。まだまだこんなもんじゃない。24時間のとびきりうまい過ごし方が見えてきた。これだけは誰にも教えるつもりはないけどこの濃密な展開に震えが止まらない。酔って更に震えて寝てしまおう・・僕らの可能性は無限だ。生きてる限り無限だ。慌てなくていい。だって僕らはすでに春夏秋冬のプロなのだから・・

とにかく数年前には想像もできないほどのスゲー時代になった・・やり方次第で、やり方次第でどーにでもなれる。やり方次第で・・やり方次第で・・されどなす術も無く寝る・・今夜も・・今夜も・・そして・・

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